機内はスーツを着た男性がほとんどだった。
平日の飛行機なんて空席ばっかりだと思っていたけど、こんなに出張する人がいるんだなぁ。
僕は荷物を棚に詰め、窓際の席に座ってケータイを機内モードにした。
ふと顔を上げると、少し手前の通路に席を探している女性がいる。
若くはないが、綺麗だ。
彼女は僕の横で歩みを止め、荷物を抱えて隣に座った。
後になって話し掛けるにはきっかけがいる。
こうゆう時はすぐアクション!
『すいません、僕棚に荷物いっぱい入れちゃって…占領しちゃいましたよね。』
『あ…いえいえ、大丈夫です。』
アラサーの色気と、清楚さがある。
人妻か?
でも指輪はしていない。
『いや、申し訳ないんでコートだけでも取りますね。』
僕は席を立ってコートを取った。
彼女は『すいません』と言って自分の荷物を空いたスペースに入れた。
『あの、そのコートも入りそうですよ?』
『じゃあ一緒に入れちゃっていいですか?帰りに間違えてお姉さんのコート着てたらすいません』
彼女がクスリと笑い、会話が始まった。
きゃりーの
ナンパDEグッドリズム~みかんのうた~『今日はありがとうございました』
時刻は23時を回っていた。
出張でみかんの国に来ていた僕は、取引先に別れを告げてホテルにチェックインした。
冷蔵庫に切り札のスイーツを忍ばせ、鏡をにらむ。
…顔が赤い。
目も血走っていて酔っ払いにしか見えない。
冷水で顔を洗い、すぐ街に飛び出した。
なんだか高鳴りがある。
久々のソロ。そしてアウェイの地。
これは大阪のストリートナンパ師として
そして自分として
人口の少ない地方都市でどれだけやれるかの挑戦だー。ホテルを出てすぐ、『大街道』という商店街の入り口があった。
ここがメインストリートのようで、ポツポツと人はいる。
商店街の真ん中くらいまで行くと、
円になってフリースタイル・ラップをする若者たち(初めて見た!)や、水晶玉を使うパフォーマーの人、ストリートミュージシャンなどのアーティストが数組いた。
そして自分はピックアップアーティスト…
…いややっぱこれ恥ずかしいから、普通にスト師でいいや笑
寒いけど、お互いがんばろうぜ。
勝手に彼らに勇気をもらい、声掛けをスタートした。
【一声掛け目】ギャル
『あの~すいません!』
『えっ?はい。』
なんだろうという顔でこっちを振り向いてくれた。
彼女は目の周りをぐるっとアイラインで囲み、その中心のカラコンから僕を見た。
『見てくださいよコレ。僕どっからどう見ても大阪から出張で来たサラリーマンじゃないですか?』
僕はあえて空にしたスーツケースを持って出ていて、彼女はそれを見て納得したようにニコリとしてくれた。
『いやいやw大阪から来たとかまでわからないですよww』
『またまたー!お姉さんクラスならわかるでしょ!俺も血液型くらいならわかるよ。うーん、A型でしょ?』
『えっ!?すごーいなんで!?』
…チョロいな。
基本的なコールドリーディングで並行トークは始まった。
『せっかくだから一杯付き合って?もしくはカラオケでみかんの歌だけ聴いてくれ。』
『いやいやwこれから友達と待ち合わせなんです。』
『でもその友達から俺にLINE入ってて、今日行けないからモトコのこと頼んだ!って言ってたよ?』
『来ますからwあとモトコじゃないしww』
意味のないバンゲをして放流。
でも結構あったまったぞ。
さぁ次々行こう!
『すいません!蛇口ひねってもポンジュース出てこなかったんですけどどうゆうことですか!?』
『お姉さん!秘密の県民ショーですけど!』
どんな声掛けをしても、簡単に反応が取れる。
僕は手応えを感じていた。
きっと間もなく連れ出せる。
~1時間後~
街が死ぬひぇぇ(;´Д`A
ソロ案件がほとんどいなくなってしまった(´Д` )
それにしてもみんなしゃべってくれるけど全然連れ出せない…!
さっきのなんの手応えやねん!
この日の最低気温は0℃
さ、さむい…(;´Д`A
『坊主』
そんな言葉が脳裏によぎる。
いいじゃないか。
別にナンパのために来たわけじゃない。
弱い自分が
弱い言葉を次々に投げつけてくる。
本当に情けない。
僕は『きゃりー』だ。
だからこそ、その『きゃりー』のジョボさを自分が一番よく知っている。
クソっ…!
まだ諦めるな!
いたぞ!久々のソロ案件だ!
『あの~すいません!』
『……。』
ガ、ガンシカ…(´Д` )!!みかんの国で初めてのガンシカをされ、そのとき心が折れた音がした。
僕はUターンして、ホテルの方向にトボトボ歩き出した。
その時、彼女と出会った。
エクステの巻き髪、ヒール、ヴィトンのバッグ。
ーキャバ嬢だ!
僕はこれが最後の声掛けと決めて、丁寧に声を掛けた。
『こんばんわ。ねぇ、みかんの国っていつもこんな寒いの?』
『…ん?ここ2.3日すごく寒いね(^^)』
彼女の笑顔にホッとした。
でも問題はここからだ。
僕は出張で大阪から来ていること
まだみかんの国の名物を食べていないことを伝えた。
『…だから、ちょっとだけ付き合ってよ。地元民を代表して鯛めしの食べ方レクチャーしてくれ!』
『え~』
グダっているが、このあとの予定は無さそうだ。
押したり引いたりして、なんとか居酒屋に連れ出した。
『コート預かるよ』
『うん、ありがとう』
僕は女性がコートを脱ぐ瞬間が好きだ。
肩甲骨がグッと寄せられ、胸が強調されるあの瞬間がたまらない。
だから彼女がコートを脱いだとき、僕はすぐにその巨乳に気付いた。
彼女は派手だが、顔は幼くてロリ要素もある。
そのことを伝えると『結構コスプレとか好きだよ』と言ってメイド姿の写メを見せてくれた。
そのときチラッと彼女の画像フォルダが見えて、そこにはたくさんの自撮り画像があった。
それを見て、あぁ、今日は勝ちだなと思った。
鯛めしを二人で食べながら、僕は彼女の話をフンフンと聞く。
最近気付いたことがあるんだけど、
全ての項目で満点取ろうとするより、ちょっとダメなところというか、変わってるところを見せた方が女性は安心するし、それによって長所が際立つ気がしている。
だから僕のターンになったとき、僕は女性の鎖骨が好きだという話を全力で気持ち悪く語った。
彼女は『キモ~イ!!』と嫌な顔をしていたが、結果として仲良くなれた気がした。
居酒屋を出て、『ホテルにスイーツがあるから』と伝えた。
彼女はその時点で、それが口実なのはわかっていたのかもしれない。
だって、結局そのスイーツの封を開けることは無かったんだから。
キスをして服を脱がすと、
童顔に似合わないFカップの胸がこぼれた。
『みんなこれに触りたくて、お店で何万も使うの。でも触らせないけどね。』
彼女のそんなプライドがにじんだセリフを胸に顔を突っ込みながら聞いた。
挿入の準備が整い、ゆっくりと彼女のカラダに自分を沈める。
『あ…ん…!』
ピストンを速めると、彼女の胸がテンポ良く揺れていく。
…今日は本当に寒かった。
くじけそうになったけど、踏ん張ってよかった。
今、本当に暖かい。
『あん!あぁーーん!!』
うーおー!!盛り上がってきたぞー!!きゃり『みかんみかんみかん!』
キャバ『みかんみかんみかん!』
みーかーーーん!!グッドリズム\(^o^)/グーッドウィドウム!!みかん汁ぶしゃー!!彼女を見送り、ベッドに横たわる。
疲れた…な。
でも今回は本当にいい勉強になった!
グアムや沖縄のようなナンパ天国への遠征もいいけど、地方遠征もオススメです(=´∀`)人(´∀`=)
ケータイを開くと、LINEが来ていた。
飛行機でバンゲした子からだった。
『今終わりました。今から会えますか?』
-END-